Posted on: 06/08/2021 Posted by: 瀬戸 郁保 Comments: 0

鑑定団で知る

 テレビ東京でやっている『お宝なんでも鑑定団』が好きで、かなり前から観ている。ここ数年は録画しているので、ほぼ数年は欠かさず観ていることになる。

 この番組を観ていると、古今東西の美術品を見ることができるし、簡単なものではあるけれど、その美術品や、その作者の歴史や生い立ちも知ることができる。本物が出た場合は、どれもとても自分には手に届かないものばかりなので、欲しくなることはないだけれど、こんなのが家にあったらいいなと思わせるものは多々ある。

 そういったものの一つが、熊谷守一の作品だろう。
 素朴でとてもシンプルだけれど、無駄がない構図や色の配置は心地よい。そしてどこかユーモラスを感じさせるところもなおいい。

映画をまず観る

 『お宝なんでも鑑定団』で熊谷守一の作品を意識して知るようになり、その頃から本人に興味が出てきて、機会があればどんな人なのか、その人となり、その人の発する言葉を読んでおきたいものだと思っていましたが、それよりも先に、映画を見ることにしました。

 主人公の熊谷守一を演じるのは、日本を代表する名俳優である山崎努氏。撮影当時の御年は80~81歳。山崎氏の年齢も役柄に深みを増している。
 そして熊谷守一の奥さんを演じるのは、個性派女優である樹木希林氏。大病を患いながら、ある種悟った感じのたたずまいが愛おしい。
 さらに脇を固めるのがきたろう、光石研、加瀬亮といったところ。


 とにかくユーモアにあふれた映画。
 晩年の熊谷守一がどのような暮らしをしていたのか、その世界が映像の中でとても豊かに語られています。足の血流に問題があった晩年の熊谷守一は、30年間も自分の家の敷地から出たことがなかったそうだ(厳密にいえば、一度だけあるそうなのだが、そのエピソードも本作品に描かれています)。自分の家という小さな宇宙は、熊谷守一にとっては毎日が新しい発見のある宇宙であったに違いない、ということが映画から伝わります。

 この映画を観るだけでも熊谷守一のことが分りますし、また、観終わった後には何かを超えた一つの境地のようなものを感じることができると思います。それよりも何よりも、映画としてユニーク、小ネタにくすくす笑い、後味のいい作品ですので、機会を作って観てほしいと思います。

ということで、著書を

 このブログは“エア本屋”。

 やはり本のご紹介をせねばなりません。

 映画を観終わった後、やはり何か一冊でも読んでみようと、『へたも絵のうち』を手にすることにしました。

 こちらの『へたも絵のうち』は、日本経済新聞の名コーナーである「私の履歴書」に本人が話したものをまとめたもの。おそらく口述筆記なのだろうけども、そこは本人の意図や雰囲気を崩さないように、もちろん誇張もなく真実が語られている。

 生い立ちから東京藝術大学へ進学していく過程や、そこで出会った青木繁などの学生との交流やエピソード。このあたりの交流の話は、日本の近代美術史の貴重な裏話ではないかと思います。

 熊谷守一氏は、年の離れた女性と結婚後、何人か子供をもうけているものの、そのうちの数人を亡くしています。そのときの悲嘆にくれたお話などは、読んでいてもその悲しみが伝わってくる。ありていに言えば、芸術家であるための人生の流れの一つなのかもしれない。が、しかし、それは熊谷守一という人物の一生を振り返ってみるからこそ感じるものであって、それはそれ以上の人生の試練であって、深い悲しみなのだ。

 そういったいろいろなことを経ながら、年齢とともに画風が変わり、そして、年老いてからますます名声が高まっていくというその孤高の存在は、なかなか他に類はない。

 戦後を代表する芸術家が、どのような道を歩み、どのような制作活動をして来たのか。

 晩年はどのように日々を送っていたのか、映画も併せて読んで、観てほしいなと思うのであります。

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瀬戸 郁保
瀬戸 郁保
コガネブックス店主

本が好きで、ついつい買ってしまう。。
本業は鍼灸師・国際中医師で、東洋医学畑の人間です。
体について、心についてといった本業に関係する本を読むことが多いですが、その他にも旅、食べ物などいろいろと。
東京の表参道で源保堂鍼灸院の院長をしている。
また、登録販売者であり国際中医師でもあり、薬戸金堂という漢方薬店の店主でもある。

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