オシムの言葉
歴史には“もしも・・・”というのはないという。
時間は一直線に過ぎゆき、過去に辿ることはできないのだから、それは当然だ。
しかし、やはり“もしも・・・”と思ってしまうのは人という生きものの性だ。
日本サッカー界は、いつもその“もしも・・・”がつきまとう。
ドーハ-の悲劇はもちろんのこと、2018年サッカー・ロシア・ワールドカップのベルギー戦も、“あのとき、もしも・・・”と振り返ってしまう。
しかしそれがまた新しい課題にもなり、バトンを受け渡していく、これもまた一筋縄ではいかない人の性。
オシムの言葉は珠玉
様々な“もしも・・・”がつきまとう日本サッカーでありますが、中でも個人的に考えてしまうのが、“もしもオシムが日本代表の監督を全うしてもらっていたら・・・”ということだ。
サッカー界だけではなく、他の多くの分野を見ても、これほど知的な指導者・上司はいない。
オシムは、もともと数学者として生きていこうと思っていたこともあるので、とても理論的。
サッカーも理詰めで構築していく趣がある。
しかしかといってごりごりの理系という感じではない。
オシムの言葉は、哲学であり、賢者の道しるべのようなところがある。
時に数学者であり、時に哲学者。
そしてその実態は、サッカー指導者。
『オシムの言葉』は、出版されてからかなり年月を経ていますが、今読んでも新鮮で、感動的。
サッカーだけではない、物事を見る目を養ってくれるところがあります。
サッカーを知らない人でも、とても多くの実りを与えてくれる一冊。
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オシムの戦術からも学ぶ
オシムと言えば、やはり戦術だ。
サッカーというスポーツを、スポーツの枠に留まらせないのがオシム流。
“戦術”というと、サッカーのフォーメーションなどを思い浮かべるかもしれない。
それはそうなのです。
しかし、本書は違うのです。
たしかにフォーメーションや、練習方法などに多くの紙面が割かれているのですが、多少そのあたりを飛ばして読んだとしても、それ以上の大きな収穫があるのがこの一冊。
つまり、サッカーというスポーツは、もはやスポーツではない。
サッカーの戦術を通して見てみると、世の中はたくさんのサッカー的なものに満たされていることがわかります。
サッカーを学ぶことは、サッカーだけではなく、ビジネスにも、勉強にも、他の多くのことへの理解が深まることでもあります。
と、教えてくれたのが、まさにオシムであります。
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さらにこのあたりのオシム本も
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)
信じよ! 日本が世界一になるために必要なこと (角川oneテーマ21)
この二冊は、それぞれその時に近いワールドカップにあわせて出されたものなので、賞味期限は切れているかと思います。
文字も大きくて、情報量も少ないです。
なので、そういう意味ではあまりオススメではないのですが、ある程度“オシム中毒”になってしまうと、何でもいいから読みたくなる。
そんな感覚で読むならば、この二冊からも示唆的なことを取り入れることができると思います。
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かつて日本のJリーグで指揮を取り、日本代表監督も務めたオシム。
志半ばで病に倒れてしまったが、それでも日本と日本サッカーに対していつも気にかけてくれているそうで、今回のロシア・ワールドカップでも、日本代表にエールを送ってくれていました。
“もしもオシムが監督を続けていたら・・・”
それはサッカーファンの間ではいつまでも答えが出ない問いかけであります。
日本を変えてくれたオシム。
まだまだ彼から多くのことを学ぶことができそうです。
レビュアープロフィール
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コガネブックス店主
本が好きで、ついつい買ってしまう。。
本業は鍼灸師・国際中医師で、東洋医学畑の人間です。
体について、心についてといった本業に関係する本を読むことが多いですが、その他にも旅、食べ物などいろいろと。
東京の表参道で源保堂鍼灸院の院長をしている。
また、登録販売者であり国際中医師でもあり、薬戸金堂という漢方薬店の店主でもある。
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