“からだ”を問い直すための本

身体は基準値に入れば正しいのか?

身体について語るとき、西洋医学的な発想から離れることができないことが多い。
西洋医学的な発想とは、ある基準値の中に収っていることが身体の正しいあり方であるという考え方だ。
例えば血圧はいくつ以上だと異常と判断されたり、血糖値はいくつ以上だから薬を飲みましょうというもの。
逆にいえば、ある基準値内の中にあれば、どんな状態にあっても正常は正常だと見過ごされてしまう。

しかしこういった発想をこのまま続けていっていいのだろうか?
人間の身体は個体差が多い。
身長も体重も違うし、育ってきた環境も違う。日々の食べ物にも差がある。

 

これだけ多くの差がある人間を、一つの尺度で測ってその高低や差異で判断するというのは、あまりに乱暴すぎるのではないだろうか?
毎日遅くまで仕事をして疲れ切っている人がいるが、検査の結果が全て枠内に入っているからといって、その人の生活は健康だといえるのだろうか?

私の両親などは個人事業主だから検査を受ける義務がないため、めんどくさいからと検査などいったことがない。
だから、高血圧も糖尿病も、コレステロールだって全くわからないので、必然薬なんか何一つ飲んでいない。
でも、全くふつうに、元気に明るく過ごしている。
自営業だから仕事は忙しく、二人とも75歳を過ぎてもせわしなく働いているにもかかわらず。

その一方で、多くの人はある一定の基準値に収るようにとせっせと“薬を飲まされている”のが現状である。
こんなに薬天国となっては医療費が下がるわけがない。

ということで、今こそ“私たちの身体って何だろう?”と、生命観というものを問い直さなくてはいけないのではないだろうか。

身体を問い直す時代へ

身体の動きから問い直す

この本の著者である野口三千三氏は、かつて東京芸術大学の教授を勤め、美術とは関係ないであろう“体操”という視点での名物講義をしていたといいます。
野口三千三先生自身は、敗戦の喪失感の中にあって、生きるための指針として身体を見つめることからはじめたといいます。
そしてその基盤として、身体の声に耳を傾けるという目的のための体操を創始する。

本書の中では、誰もがもっている自分の身体に対し、少し変わった角度から問いかけを行う。
そこに明瞭で画一的な答えを見出すのではなく、感じるままの姿を味わうという姿勢。
そこから伝わってくる正直な感じをそのまま受け止める。

たとえば一般的には人が嫌うであろうナメクジや蛇といったものの動きを感じ取り、そして人間の身体と対峙する。
そういうことを繰り返していくうちに、やがて新しい生命観・生命力が湧いてくる。
そこにこれからの生きるヒントが出てくるという。

結局のところ、生きている実感とは私たちの肉体を通して感じられるものであり、自分自身が感じないと分からないものであると、現代の身体観への問いかけをしてくる一冊です。

生命の発生から問い直す

進化から問い直す

エコ‐エボ‐デボから問い直す

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