日本人論を読んでみる

日本人とは?という問いかけの必要な時期

少子高齢化が進む日本は、慢性的な人手不足に陥る(現在既に陥っているとも)と言われている。

そのため政府は外国人受け入れ政策を転換。

出入国管理法(入管法)改正案が衆院本会議で可決され、2019年4月から施行される見込み。

何がどうなるのか正直私はよくわからないのですが、感覚的に感じるのは、これまでずっと島国根性できた日本人が、急に多くの外国人を受け入れることができるだろうか?というところ。

たとえば反対意見の中には、外国人の犯罪者が入ってきたらどうするんだというのがあるけれど、日本人にだって犯罪者はいるわけで、これは差別的な反対意見だと思うし、こういった感覚こそが島国根性であると思う。

この間、小さいお子さんをお持ちのお母さんと話したら、「イギリスでは、駅などで階段を昇ろうとしたら、近くにいる男性がふつうに乳母車を上まで持ち上げてくれるが、日本では誰も手伝ってくれない」といっていた。東京オリンピックの招致演説では、滝川クリステルが「お・も・て・な・し」といっていたが、もはやそんなホスピタリティをもっている日本人は少数派なのではないかと感じる。

法律のことは詳しくわからない。

でも、もう決まったわけでから多数の外国人が入ってくるということは肝に銘じておかなければならない。
法律のことをとやかく言うよりも(議会制民主主義だからとやかく言うことも大事だとは思うが)、日本人というアイデンティティはどこへいってしまうのか?、“日本人”というものが今後も存在するのか?という問いかけをしておくことのほうが現実的には大切ではないだろうか。

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司馬遼太郎に訊く

司馬遼太郎は、戦争で戦車部隊だったそうだ。そして大戦中にすでに日本の敗戦を予感し、敗戦後はどうしてこんな無謀な戦争をしたんだという怒りと、いったいこうもたやすく負け戦に駆り立てられていった日本人の特殊性に深い疑問を持ったそうで、そのあたりから「日本とは?」問いかけがはじまり、氏の作家活動もはじまった。

特に司馬遼太郎がお気に入りの時代は、幕末・明治の頃の日本。
それまであまり大きな存在として扱われてこなかった坂本龍馬を一躍スターダムにのし上げた『竜馬がゆく』はもちろんのこと、『翔ぶが如く』『坂の上の雲』など、幕末・明治の日本を舞台にした時代小説は氏の代表作として人気が高い。

今回上に上げた二冊は時代小説ではありません。

一冊目は海音寺潮五郎氏との対談。幕末から明治にかけての人物評をしながら、時代の空気を語り合う。そしていつしかそれは現代の日本人(出版されたのは昭和40年代なのでその頃の日本)について話が及び、これから向かっていく日本人の方向性についていくつかの示唆を示している。
特筆すべきは、海音寺潮五郎氏の発言であろうか。“司馬遼太郎”といいながら海音寺潮五郎の発言を書くのもなんですが、海音寺潮五郎氏は本書の中で、いずれ世界が一つの国家になるであろう、しかしそれはまだだいぶ先の話であって当然困難もたくさんあるという趣旨の話をしている。これを読んですごい発想をする人がいたんだなと感動しました。現在、インターネットやスマートフォンが普及し瞬時に世界の情勢が手に取るようにわかるようになり、YouTubeで様々な国の人々の様子を見ることができ、キャッシュもなくなるのではないかという勢いであり、世界は昔に比べて小さくなっているような気もしてくる。

閑話休題。

日本人とは?

結論からいうと、日本人というものを捉え直す際に、幕末・明治の頃の日本人をお手本にしてみてはどうか?ということ。

その点で、司馬遼太郎が語り続けてきたことに耳を傾けるというのはとても意味のあることではないかと思うのであります。

日本人的行動様式から

いわゆる“もりかけ問題”というものがある。
そこから「忖度(そんたく)」という言葉が一般的になりました。正直それまで忖度という言葉を日常生活で使ったことがなかったのでが、今ひとつよく分かりませんでした。

しかし、その言葉が持つニュアンスは直ぐに理解することができました。

つまりそれは、私も日本人的であると言うことでしょうか。
数年前に「KY=空気・読めない」というのも流行りましたが、これも“空気を読む”という日本独特の、忖度問題と根底で通じるものであります。

そんな日本人の心の底にある基本的なところを理解しておくことは、“日本人論”には欠かせません。

ということで、古典的なものを二冊ご紹介いたします。
一冊目が中根千枝氏の『タテ社会の力学』。
中野千枝氏は、1926年(大正15年)生まれの日本を代表する社会人類学者。なんと2019年現在も御年92歳で現役!すごい!

古典的な名著として現在も読み継がれておりまして、現在でもなるほどと思わせるところがたくさんあります。
このタテ社会の力学もそろそろ解体してほしいものではありますが、根強いのでしょうか。
いずれにせよ、目を通しておくことをお薦めいたします。

そして次にご紹介するのがこちら。

この『「甘え」の構造』も1971年に出版された古典的な本ではありますが、やはり今の日本を象徴しているところがあります。
著者の土居健郎氏は、心理学の先生。
そういった立場から、本書は心理学的な側面からみた日本の病巣を掘り下げたものです。
現在は賛否両論があり、良くも悪くも評価が二分しますが、当時の試みとして重要な提示をしてくれたと思います。

隠れた名著

こちらはたまたま古本屋で見つけたものです。
荒木博之という方がどういう方のなのかよくわからず、何となくタイトルに惹かれて手に取り、ぱらぱらとめくって購入したもの。

最初は沖縄の言葉から始まり、どうしてこれが日本人の心情につながるのだろう?と不思議に思いました。
しかし、それがぐる~っと巡って日本人の心情につながっていくことがぴたっと迫ってくる。
この大きなつながりは、文化という長い歴史の中で培われ、醸造していく過程の奥深さを感じさせます。
こういった日本人論はあまりお目にかかったことがないので、目から鱗が落ちる、そしてそれが心に染み込んでじわっと感動すると言う、何とも言えない味わいを感じる一冊です。

レビュアープロフィール

瀬戸 郁保
瀬戸 郁保
コガネブックス店主

本が好きで、ついつい買ってしまう。。
本業は鍼灸師・国際中医師で、東洋医学畑の人間です。
体について、心についてといった本業に関係する本を読むことが多いですが、その他にも旅、食べ物などいろいろと。
東京の表参道で源保堂鍼灸院の院長をしている。
また、登録販売者であり国際中医師でもあり、薬戸金堂という漢方薬店の店主でもある。

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