スヌーピーを題材に
スヌーピーは知っている。
いつも犬小屋の上で仰向けに寝ている、あの世界的なキャラクター。
知らない人はないだろう。
しかし、そのスヌーピーがショートマンガであることを知っている人は少ないかもしれない。
日本でマンガと言えば手塚治虫を代表とする数ページのストーリー性のあるものだから、スヌーピーはマンガというよりは“犬のイラスト”くらいにしか思われないだろう。
私も知らなかった一人。そう思っていた一人。
確か小学生のとき、谷川俊太郎さんの詩が教科書だかに取り上げられていて、担任の先生が、「この人はスヌーピーを翻訳した有名な詩人です」と紹介していて、かろうじてスヌーピーが単純なキャラクターではなく、何かの物語なのかもと認識するくらいで、それ以上は何も知らずにきた。
今回ご紹介する『いいことはいつくるかな』は、スヌーピーのマンガを一つの題材にして、そこから人生を好転していくヒントを語るというスタイル。
本書を読むまで、私はスヌーピーがマンガであることも知らなかったし、さらには、スヌーピーが主人公だとばかり思っていました。しかし本書を読みますと、スヌーピーの主人公はチャーリー・ブラウンであり、それを取り囲むようにして特徴的にキャラクターづけされた登場人物が何名かいて、そして彼ら彼女らがいろいろとシニカルなことをしでかすという、それがスヌーピーなのだとわかりました。
本書を通してスヌーピーを読む・・・。
すると最初の頃は、スヌーピーって、けっこう暗いんだな・・・なんて思ったりする。
どうしてこのような物語が世界的に有名になり、世界的なキャラクターにまでなったんだろうなというのが正直な感想。
しかしそこから
そんな悪い印象から私は本書を読み始める。
しかしそこから、だんだんと著者の世界に引き込まれ、そして同時にスヌーピーの世界にも浸っていく。
本書は、スヌーピーの一コマを挙げながら、そこから私たちに問いかけてくる。
ときに厳しいこともある。
本書は、あえて分類するとすれば、スピリチュアル系であり、自己啓発系といったところだろうか。
そういった本も、かつては嫌いではなかったから、何冊か手にしたものもある。
それらを読むと、けっこう世界はお花畑が広がっている。
つまり、何でもいいよ、好きなことすればいい、世界はあなたを中心に回っている・・・そんな美辞麗句が並び、努力しなくてもすべてが解決するような、そんなお気楽な世界が広がっている。全部が全部そうではないにのかもしれないけれど、少なくとも私が手にしたものはそういうものばかりだった。今はそういうものが好まれるのだろう。がんばれとか、気合いだとかいうと、根性論だとか、古いとか、はたまたエビデンスがないとかって言われてしまうのが落ちだ。
でも、私はそういったものが結局好きになれなかった。心底それが良いことだとは思わなかったし、自分を救うものだとは思えず、最終的にはその頃に読んだ本はすべてヤフオクに出したものだ。
本書はスピリチュアル系、自己啓発系と数行前に書いた。
そして私はそれらが嫌いだとも述べた。
しかし、私はこの本が好きになったし、だからこそここでも取り上げることにした。
では、それはなぜか?
それは、本書はこれまで私が読んできたそれらのジャンルのものはちょっと一線を画していると感じたから。
やや厳しいところが多いのだ。
厳しすぎない程度の厳しさ、そこは自分の気持ちで乗り切らなくちゃっていう、奮起するところを感じたからなのだ。
これは、現在否定されている根性論とか、気合い主義ではない。
私は半世紀を生きてきたけれど、人生振り返ってみると、ここは絶対に根性で踏ん張らなくてはっていうときは何度もあったし、実際に踏ん張った結果良いほうに好転した。だから、誰が何と言おいうと、やはり人間がんばるときはがんばる、自分の力を振り絞る時期っていうのがあるものなんだ。
でも、それだけでは疲れてしまうし、誰も自分に助言をしてくれる人がいないと、つらいだけで挫けてしまう。
そなんとき、自分を後ろから支えてくれるものが必要なんだ。
厳しい、でも、ちゃんと支えていてくれる。
遠くから見守ってくれる存在。
そういった存在に気づかされると、あ、生きててよかった、死ななくてほんとによかった・・・。
大げさだけど、そういう気がするのだ。
人間生きて入れば大変なことばかりだ。
でも、それから逃げることは出来ないんだ。
倒れないように、うまくすり抜けることも大切。
でも、耐えるところは耐える。
怖気づかないように、しっかり一歩前に出る。
勇気を出して、恐れず前を向く。
そういうこと、それが大事だ。
五十歳を過ぎた私は、本書を通してスヌーピーを知り、そしてお子様向けだと思っていたスヌーピーから、改めて人生を学んでいるのでありました。
その他の関連本・音楽
これまでのレビュー
レビュアープロフィール
-
コガネブックス店主
本が好きで、ついつい買ってしまう。。
本業は鍼灸師・国際中医師で、東洋医学畑の人間です。
体について、心についてといった本業に関係する本を読むことが多いですが、その他にも旅、食べ物などいろいろと。
東京の表参道で源保堂鍼灸院の院長をしている。
また、登録販売者であり国際中医師でもあり、薬戸金堂という漢方薬店の店主でもある。
レビュー記事
- MUSIC2021.10.01『君が僕を知ってる』 RCサクセション
- MUSIC2021.08.24ハンバート・ハンバート
- 旅に行きたくなる2021.08.12『中国手仕事紀行』
- 人生をよりよく2021.08.10『いいことはいつくるかな?』